「セリは大丈夫よ。あたしが特別に調合した解毒薬を塗ったから。さ、あとはこれを飲みなさい。そうすれば体内に回った毒も解毒されるわ」

 マスター・クマゴンが木のスプーンを私の口元に近づけてきた。「あーん」という声に合わせて口を開けると、どろっとした生温かい液体が舌の上に落とされた。

「う、に、にがっ」

 あまりの苦さとその強烈な匂いに目を白黒させながら、私はペぺぺっと舌を出した。

「こら、飲みなさい!」
「やだ、苦いもん」
「あんたは子どもか!」
「どうせ子どもだもん」

 私はぷいっと顔を横に向けた。マスター・クマゴンがどうにか飲ませようとスプーンの角度を変えながら口元に近づけてくる。

「怪我人なんだから、いたわってよぉ。もっと甘いのがいい」
「ワガママ言わないの!」

 私たちのやりとりで目を覚ましたのか、勇飛くんの声がする。

「それだけしゃべれるなら元気なんじゃないの?」
「でも、飲み薬も飲んだ方がいいわ。回復が速まるから。ねえ、この子ってこんなにワガママだったの?」

 マスター・クマゴンの声に、勇飛くんがおもしろがるような口調で言う。