そうつぶやいたつもりだったけど、私の喉は何の音も立てなかった。私はまたすぐに真っ暗な眠りの中に落ちていった。

 次に目を開けたとき、目の前にはクマゴンがいた。

「あ、クマゴンだ……」
「んもう、マスター・クマゴンってお呼びって何度言ったと思ってるのよ……」

 クマゴンが泣き笑いの顔で言う。

「ごめんなさい……」
「いいわ。今だけ特別」

 マスター・クマゴンは私の髪をそっと撫でると、後ろを振り返った。

「セリが目を覚ましたわ……と、ユウヒ様は眠ってるわね。疲れが出たのかしら。ずっとあなたに付き添ってたそうだから」
「ユウヒくんが?」

 私はベッドに起き上がろうとしたが、体のどこにも力が入らなかった。

「ダメよ、まだ寝てなさい。あの女、剣にサーペンティンの毒を塗ってたのね、ホントに卑怯な女」
「サーペンティン……」

 つぶやくような私の声に、マスター・クマゴンが答える。

「大蛇の一種ね。すごく動きは鈍いんだけど、牙には猛毒があってね、噛まれると……」

 そこまで言って、マスター・クマゴンはハッと口をつぐんだ。

「噛まれると……どうなるの?」