魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

「逃げろっ」

 勇飛くんが叫んだ直後、私も彼も反対側の壁に叩きつけられていた。彼女が強力な攻撃魔法を放ったのだ。

 私は咳き込みながら床の上に崩れ落ちた。勇飛くんはよろめきながらも、私を背中にかばって剣を構える。彼が斬りかかるよりも早く、ディヴィナが停止呪文を唱えた。

「剣士の動きを封じよ、インピーディム!」
「くっ……」

 勇飛くんが身動きできなくなり、歯ぎしりをする。ディヴィナがゆがんだ笑みを浮かべながら、床に落ちていた自分の剣を拾い上げ、勇飛くんに向かって振り下ろした。

「ダメーっ」

 私はとっさに勇飛くんの前に回り込み、両手を頭の上で交差させて、剣を受け止める。革のチュニックは盾ほどの威力はなく、ディヴィナが剣を引くと同時に切り裂かれて、皮膚が裂けた。

「ああああーっ」

 右の前腕に焼けるような痛みが走り、私は膝をつく。

「セリ!」
「ああっ……くっ……」

 左手で斬られた腕を押えたが、指の間からポタポタと生温かいものが流れ落ち、床を紅く染めていく。

 私は気力を振り絞って右手を伸ばし、吹き飛ばされたときに落とした杖を拾った。

「ディ、ディスペル……」