魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました

 私は手早く服を身につけ、腰紐に杖を差して公衆浴場を出た。

 宿屋の部屋に戻った私は、部屋の中の光景を見て愕然とした。

「ほら、ユウヒ、あーんして」

 暖炉に火が入った温かな部屋の中で、夕食ののった食卓を囲みながら、アーマントゥルードさんが勇飛くんの口元にスプーンを近づけているのだ。

「ありがとう、でも、一人で食べられるよ」

 照れた表情の勇飛くんに、アーマントゥルードさんが体を寄せる。

 何なの、このラブラブカップルみたいな雰囲気は!

「そんなつれないこと言わないで一口だけ」
「じゃ、一口だけ」

 勇飛くんが、あのクールな剣士で学級委員の勇飛くんが、あーんしようとしてるっ!

 私は頭に血が上ってテーブルを平手で叩いていた。ガチャンと大きな音がして、果物カゴのリンゴが転がり落ちる。

「おばさんっ! ユウヒくんは子どもでも病人でもないんだから、一人で食べられます!」
「お、おばさん!?」

 アーマントゥルードさんにキツイ目で睨まれた。美人がすごむとものすごく怖い。でも、負けないから!

 負けじと私も彼女を睨み返す。間に挟まれた勇飛くんは肩身が狭そうだ。