薔薇の夢をあなたに

気付かないうちに、ステージの猛獣ショーはクライマックスを迎えようとしていた。
もうすぐ私の出番なようだ。

猛獣ショーの醍醐味である火の輪くぐり。
拍手喝采に包まれて、ショーは今日で一番の盛り上がりを見せていた。

ステージ上のムチを握った女性と何体もの猛獣が優雅に一礼をする。
それに合わせてステージが暗転する。

「ロゼットさん、お疲れ様です！！！」
舞台袖にはけてきた、シルクハットにピッタリとしたタキシードを着た女性に声をかける。

「ありがと、さぁ、ジュリエット！今度はあなたの番よ。」
ロゼットさんはあっという間に上着を脱ぎ、
舞台袖に用意してあるピアノに優雅に腰掛ける。

「伴奏は任せて。ステージ楽しんで。」
ステージ直後の興奮したような笑顔のまま、茶目っ気たっぷりのウインクが飛んできた。

「いってきます！」
私は、姿勢をただし、靴音を響かせながら光の中に歩み出た。