薔薇の夢をあなたに

私の出番は、前半のラスト、猛獣使いのパフォーマンスの直後だ。

舞台袖から覗くと、観客席は超満員だった。
座席に座れなかったお客さんたちが通路や階段にあふれている。
老若男女問わず集まった人々に共通しているのは、興奮したような上気した笑顔だった。

私は、魔力を高めて“目”を開いた。
私は特別な魔力を持っているようで、魔族の探査能力がずば抜けて高い。
各公演の初めに、チェックするのが仕事の一つでもある。

テント内に魔族の侵入は許していないか…
人々の危険は迫っていないか…

今日は幸いなことに、トラブルの種は見当たらなかった。

何も見当たらないなんて、いつの公演以来かしら。
さすが、【星の国】の王都ね。治安の良さが他の地域とは比べものにならないわ。