薔薇の夢をあなたに

デイヴィスはすっと立ち上がると、壁際の本棚の前に立ち、一冊の絵本を取り出した。







「姫様はこの絵本はご存知ですか?」
その絵本はこの国に住む者ならみんな知っているであろう有名な本だった。
「えぇ、三つの石の物語ね。」







それは私たちの世界に伝わるおとぎ話だった。







簡単に言うと、サタンという悪魔の王様の悪さがあまりにもひどいので、三人の王様が協力して冥界に封印した、というものだ。







その時、封印の媒体として使ったのが不思議な力を持つ三つの石で、その石を中心に【太陽の国】、【月の国】、【星の国】ができたという。









「この物語は決してつくりものではなかったのです。何者かが太古の封印を破り、魔族の王であるサタンが再び地上に君臨させようとしているのです。」









私は乾いた笑い声をあげようとした。あぁ、そんなおとぎ話信じているの、デイヴィス?笑わせないでよ…






そう言いたかったのに言えなかった。彼の瞳には冗談を言っているような雰囲気は微塵も感じられなかった。








そして、何より私自身がビジョンを通してその悪魔の存在を感じ取っていた。
「…事実…なのね。」
デイヴィスは神妙にうなずき続けた。








「俺たちは【太陽の国】が太陽の石を守護していたのと同じように、【月の国】【星の国】もそれぞれ石を守護しているのではないかと仮定しました。







そして、この三つの石が冥界の封印にまつわる何らかの鍵ではないかと推測しています。
もしこれが事実ならば、先代国王が命をなげうってまで石を守ろうとしたのか、ようやく合点がいくのです。」