薔薇の夢をあなたに

「素敵な人だったなぁ…」

次の日、パシャパシャと水を跳ね散らしながら、私は洗濯をしていた。

「ちょっとジュリエット!冷たいんだけど。」
見れば、かなり彼女の服を濡らしていたようだ。

「ああ!ごめんなさい!ロゼットさん…」

「さっきからいったいどうしたの?ずーっと顔赤くしてぼーっとしてさ。」

「いや!これは!!」

しまった、あからさまにおかしい私の反応を見て、感づかれたようだ。

「さーては。昨日あんたに会いに来た貴公子と何かあったな?何?早速口説かれた??」

「え!!そういうわけじゃ!!」
「んー?じゃあどういうわけなんだー??ふふふ…」


昨日アレン様に触れられた部分の髪をいじりながら話す。

「別に、また私の歌を聴きたいっていわれただけだよ…」

正確には「また逢いたい」って言われたのだけど…髪を見つめていると、急に昨日のことがフラッシュバックしてくる。

「なーに一人でトマトみたいに赤くなってるの?」
口をあけて笑われる。

「あの貴公子様、あんたに一目ぼれしてるね、間違いなく。あんたに会わせてくれっって来た時の瞳、本気で本気だったもん。」

ロゼットさんは一人納得顔だ。

「そんなはずない!!もうやめてよ!この話はもう終わり!ね?」

私は恥ずかしいのと、きれいなアレン様の顔が脳裏に浮かんできてしまって、どうしようもなく赤くなってしまった。

「でも、団長に舞踏会行きは止められたんでしょ?」
「そうなの。私はまだ一人じゃ自分の身は守れないからって。」

結局、あの後テントに戻ると団長からNGを出されてしまった。本当に信じられない。

「まあね、団長の気持ちは分かるよ。娘みたいなものだからね、あんたは。なんだかんだ、夜にテントの外に出したくないのよ。」

私達『暁の夢』のテントは、ロゼットさんの結界魔法で守られているので基本的には常に安全な空間となっている。

つまり、そこから出ては自分の身は自分で守らなければならないのだ。

団長が私の身を心配してくれているのは分かる。でも私だって譲れないときはある。

「私今日の手合せで、団長に挑むわ。」
「え?」
「手合せで団長から一本取って、強さを証明する!
だって、舞踏会絶対絶対行きたいの!」

私は燃えていた。せっかくのチャンス逃したくはない。舞踏会に行きたいのか、歌を披露したいのか、アレン様にまた逢いたいだけなのか、そのあたりは正直よくわからなかった。