勝手に古今和歌集

そんなこんなで犬飼くんは、あたしの想像を遙かに上回るポジティブシンキングぶりで、あたしの作戦を次々に打ち破っていった。





あえて犬飼くんに聞こえるように「好きな人トーク」を繰り広げてみたり(好きな人のいるところではそんな話フツーしないでしょ?)。




朝のあいさつも、至極さらっとしたもので済ませてみたり(さして犬飼くんと話したいわけじゃないのよアピール)。




犬飼くんと廊下ですれ違っても、目も合わせず、喋りかけもしなかったり。




犬飼くんが授業中に寝てるとき、椅子をガツンと蹴ってみたり(犬飼くんの前で女の子らしくしようなんてこれっぽっちも思ってないのよアピール)。






………どれもこれもが不発に終わった。




犬飼くんは何にも気にするふうもなく、平然と過ごしていた。