勝手に古今和歌集

一つ上の階の女子トイレに駆け込んで事情を話すと、渚は憐れみの表情を浮かべた。





「………なにそれ、犬飼くん、マジやばいじゃん」





「そーなの……あたしが犬飼くんのこと好きとか、マジ思い込みも甚だしいよ」





「いやー、だって犬飼くんだもん、思い込みとかめっちゃ激しそう」





「だよね………」






あたしと渚は顔を見合わせて、盛大なため息を吐き出した。






「とりあえずさ、犬飼くんの勘違いを解消しなきゃね。


とにかく、犬飼くんのことなんか好きじゃないって思わせないと!!」






渚の素晴らしいご意見に、あたしはこくこくと頷く。






「なんだったら、他の男子が好きってアピールするのもいいんじゃ?」





「でもさ、それで犬飼くんがその男子うらんだりしたら怖くない?」





「たしかに……」






あたしたちはもう一度、はあっと息をもらした。