私は病室に置いてあった鏡に手を伸ばした。
そして
パリン
鏡を床に叩きつけて割った。
バラバラに砕けた鏡の破片を手に取り、
迷わず首に尖った部分を向けた。
お母さんが死んだ原因は私。
お母さんが死んだのは、包丁で首の血管を切ったから。
だから、私もお母さんと同じ
同じ死に方にしようと思う。
「お兄ちゃんゴメンね。」
最期にお兄ちゃんに謝罪をして、鏡を首に刺そうとしたのに
「柚ちゃんっ!」
様子を見に来たであろう、夏美先生に止められた。
「………」
「柚ちゃん、死んだらダメよ。
貴方は生きるの。生きなければならないの。
貴方が死んだら遺されたお兄さんはどうするの?
遺された者の痛みは貴方が一番分かっているでしょ。」
腫れ物を扱う様に、優しく抱き締めながら説得する夏美先生。
「でも、お母さんは私を要らないって言ったから。
私の所為でお母さんは死んだのに、
私がお母さんを殺したのに、
なんで私は生きてるの?
要らない子は死なないと。
お兄ちゃんもきっと納得してくれるよ」
機械の様に淡々と話す私から、感情は読み取れない。
「じゃあ、お母さんが自分の所為で死んだと思うなら
生きてお母さんに償いなさい。
今死んだら、逃げたのと同じよ。」
「…………」
「それに、完璧になりたいって言ってたじゃない。
完璧にも限度はあるけど、生きてないと完璧にはなれないのよ?」
悪戯っぽく笑う夏美先生。
完璧になって、お母さんに償う。
あっ……私の目的はそれじゃん。
やっと正気に戻った。
「夏美先生、ありがと。
私、頑張るから。生きて頑張るから。」
私がそう言うと、ホッとした様子の夏美先生。
「良かった……。頑張りなさい。
でも、無理は禁物よ。
今度また、こんな事になったら戻れなくなると思いなさい。」
最後に釘を刺されたけど。
それから1週間後、私は退院して元の生活に戻った。
完璧な新藤 柚葉として。
玲央の彼女として。
学校を1ヶ月以上休んでたから、みんなに心配されたけど、風邪を拗らせて入院って事にしておいた。
もちろん玲央も。


