「今のあなたは心が不安定だ。
だからカウンセリングを受けて、心のケアをするんです。」
「………」
する気なんて無かった。
「柚葉、受けてみれば?」
でも、お兄ちゃんが言うなら仕方ない。
「……する。」
「じゃあ、支度が出来たらもう一度呼びに来ますので、それまで待ってて下さい。」
そう言って出て行った白衣の男の人。
「………」
「柚葉、お前の所為じゃない。
自分を責めるな。」
昨日から、こればかりを私に言うお兄ちゃん。
お母さんが死んだのは私の所為。
私の所為なんだよ……お兄ちゃん。
「新藤さん。支度が出来ましたのでこちらにどうぞ。」
5分程すると、さっきの白衣の男の人じゃない、ナースの人が来た。
「柚葉、行ってらっしゃい。」
「お兄ちゃんは?」
一緒に行くんじゃないの?
「俺は先生と話があるから。
行っておいで。」
「……分かった。」
渋々ながら、ナースに着いて行く。
病院着を着ている私を入院患者と分かったからか、
「こんにちわ」
すれ違う医者や、ナースが挨拶をしてくれる。
それに私は
「こんにちわ」
……笑顔で挨拶を返した。
さっきまで無表情で、お兄ちゃん以外受け入れなかったのが嘘みたいに。
でも、それは決して本当の笑顔なんかじゃない。
あの男に犯されるようになって、感情の欠落した私が自然と身につけた
他人に何も悟られない、自分を守る為の完璧な笑顔。
それを診察室に着くまで、意識をしなくとも自然とやっていた。
案内しているナースに話しかけられても笑顔。
通り縋りの医者やナースがしてくる挨拶にも笑顔。
病室を出てから、私は終始笑顔だった。


