何十分経ったんだろう。
お兄ちゃんが慌てて家に入ってきた。
「あ、お兄ちゃん……。」
「柚葉!大丈夫か!?って……」
目の前の光景に絶句しているお兄ちゃん。
お母さんは血だらけで死んでるし、私の手も血で染まっている。
おまけに、血と酒の臭いが混ざって気持ち悪いし。
お兄ちゃんは私に何も聞かないで、何処かに電話をしている。
その様子をボーッと眺めている私。
お母さんが自分の所為で死んだのに、涙が出ない。
どうして?
悲しいのに、涙が出ない。
もう、どうにでもなれ。
プツン、と私を保っていた糸が切れた。
「柚葉!」
意識が途切れる時、遠くでお兄ちゃんが叫んでいた気がした。
ーーーーーー
ーーーー
次に起きた時は、真っ白な部屋だった。
微かに香る薬品の匂いに、ここは病院なんだと分かる。
「お兄ちゃん…?」
居ないの?
誰も居ないの?
一人にしないでよ……
あいつが来る。あいつが来ちゃう。
ー「柚葉ちゃん。綺麗だよ。」
って。
ー「君は俺のだ。」
って。
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ
「ぁ……ぁぅ……」
コツコツと近づいてくる足音に、恐怖で声も出ない。
ガラッ
ドアが開いた。
「いやぁぁぁぁぁ!来ないで!来ないで!近づくな!ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ」
耳を抑えてうずくまる私を
フワッと誰かが抱きしめた。
「柚葉……」
「お…に、ちゃん?」
辛そうに顔を歪めるお兄ちゃん。
「柚葉。俺がお前を守るから。
安心しろ。」
「お兄……ちゃん。どしよ……
私の……私の所為でお母さん……
死んじゃった。私の所為だ。私の所為でお母さんが……どうしよ」
「お前の所為じゃない。」
私を落ち着かせようと、背中をポンポンするお兄ちゃん。
「新藤 柚葉さん。」
ビクッ
ドアの方から、知らない男の人の声。
「や……来ないで!やだ!
私は……あんたのなんかじゃない!
来ないで来ないで来ないで来ないで!」
お兄ちゃんにしがみついていると
「警察の者です。」
「ゃ………」
顔を向けると、私を辛そうに見る男の人。
「お話を伺いに来たのですが……
また明日伺う事にします。」
「お願いします。」
お兄ちゃんと男の人のやり取り。


