次の日から衛さんは、我が家で一緒に暮らすことになった。


私はお父さんが出来た事にすっかり舞い上がっていた。


お兄ちゃんも口には出さないけど、結構気に入ってるみたい。


お母さんも、前より笑うことが増えた。


大きな変化と言えば


「柚葉、今日のご飯何がいいかしら」


お母さんが話しかけてくれること。


前までは、家事なんてしないし、私とお兄ちゃんを視界にさえ入れなかったのに

衛さんが来てから毎日ご飯を作ってくれるようになった。


衛さんが来てから、ウチは明るくなった。


「柚葉。ちょっといいか?」


「いーよー」


衛さんが来てから1ヶ月。


大学から帰ってきたお兄ちゃんに呼ばれた。


お兄ちゃんの部屋に入ると向かい合って
目の前には真剣な顔をしたお兄ちゃん。



「柚葉、俺さ、この家を出ようと思う」


「えっ……」


頭が真っ白になった。


お兄ちゃんが、この家から居なくなる…


ショックだった。


「衛さんが来てからずっと考えてたんだ。
あの人がいる限り母さんも大丈夫そうだし、柚葉も安心出来るだろ?

俺もそろそろ一人暮らしをしようと思うんだ。」


「寂しいな……」


素直な気持ちにお兄ちゃんは


「別に居なくなる訳じゃない。

何かあればすぐに帰ってくるし、柚葉が呼べばいつだって来てやるさ。」


だからな?と、私の頭をポンと撫でる。


「絶対だよ?約束だよ?」


「あぁ。約束だ。」


そう言って私はお兄ちゃんと指切りげんまをした。


事前にお母さんと衛さんには、伝えてあったらしくお兄ちゃんは
1週間後に新しいマンションに引っ越してしまった。


寂しいけど、お兄ちゃんも大人だから

いつまでも私のことで迷惑かけていられない。


そう思って笑顔で送り出した。