ある日、学校から帰ると玄関には見たことない男物の靴があった。


お客さんかな…?


疑問に思いながらも


「ただいまー」


リビングに入ると、


「おかえり」


いつもは絶対に返してくれない、お母さんからの挨拶が聞こえてきた。


思わず固まっていると、


「柚葉、話があるの。早く入って」


いつもとは明らかに違う、ウキウキしたお母さんの声。


リビングに行くと、いつもよりお洒落をしたお母さんと
その隣に、知らない男の人。


男の人は、お兄ちゃんと仲よさげに話している。


「……だれ?」


「柚葉おかえり。」


お兄ちゃんが優しい笑顔で迎える。


男の人は、この子か…と言って、私の前に来た。


「柚葉ちゃん、初めまして。

相模 衛って言うんだ。よろしくね?」


私の目線に合わせて、笑顔で自己紹介をする衛さん。


「新藤 柚葉です。よろしくお願いします。」


悪い人じゃなさそう、と思い私も自己紹介をした。


そしていつもは笑わないお母さんが嬉しそうに笑って


「戒にはもう言ったんだけどね、私
衛と結婚することにしたのよ!」


と、言った。


「結婚…?」


「そうよ、結婚!
つまり柚葉のお父さんになるってこと」


いつもはこうやって聞き返すと、「そんな事も分からないの?」とため息を吐かれるのに

幸せそうに説明してくれたお母さん。


「私のお父さん…?」


お母さんは、私にお父さんが居ないのを心配してくれてたの?


だから作ってくれたの?


「お母さん。幸せ?」


「ええ。もちろん幸せよ。」


幸せそうに微笑むお母さん。


「衛さん、これからよろしくお願いします。」


だから私は、衛さんとお母さんの結婚を祝福した。


こんなに幸せそうなお母さん、初めて見たから。


大丈夫かもって。


「良かった…こちらこそよろしくね」


ホッとした様子の衛は、私の頭を撫でる。


新藤 柚葉、11歳。


新しいお父さんが出来ました。