「柚葉、玲央と二人で話したいから部屋行っててくれ。」
「はーい」
俺と二人になりたいと言う戒さんに、思わず緊張で背筋が伸びる。
「んな緊張するなって。」
「あ、はい。」
仮にも彼女のお兄さんと二人きりになって、緊張しない奴なんて居るのか?
「なぁ玲央。」
「はい。」
さっきと変わって、真剣な顔つきの戒さん。
「一つ約束しろ。
お前が関わっている事で、柚葉にもし何かあった時、俺はお前に時間をやる。」
「時間……ですか?」
「気持ちの整理をつける時間だ。
俺がお前に出した期間、柚葉に会うな。
そして、その後柚葉に会えるかも柚葉次第。」
「………」
俺を真っ直ぐ見て、話す戒さん。
これから先、もし何かあったら……
別れるか別れないかは柚葉次第。
「俺はお前に期待している。
お前なら柚葉を変えてくれると。
でも、俺はあくまで柚葉の味方だ。
だからあいつの気持ちを優先する。
だから約束してくれ玲央。」
柚葉の事を大切にしていると、痛い程伝わってくる。
「わかりました。約束します。」
そんな戒さんだから、俺は約束したんだ。
「ありがとな。」
「柚葉の事は俺が守ります。」
改めて誓ったんだ。
「話は変わるが、流星って暴走族知ってるか?」
「知ってます。」
流星は全国No. 1の暴走族。
見たことはないけど、正義のヒーローのように称されている流星に憧れを抱いていた。
「俺、ついこの間まで総長やってたんだよ。」
「えっ!?」
さらりと爆弾発言をした戒さん。
戒さんが流星の総長だった?
でも、明らかに他の人とは違うオーラーを出している戒さん。
「玲央、流星に入らないか?」
「えっ……」
まさか、総長自らスカウトされるとは思わなかった。
「お前は上に立つ素質がある。
俺が保証してやるよ。」
「……入りたいです。お願いします!」
理由はただ一つ。
柚葉を守れるような強い男になりたかったから。
「来週、倉庫に連れて行く。
今の総長には俺から話しておくから。」
「はい!」
ワシャワシャと俺の頭を乱暴に撫でる戒さん。
それで俺は、柚葉の為に流星に入ったんだ。