ソファに座っていた柚葉のお兄さんは、こっちを振り返る。
「君が柚葉の彼氏?」
笑っているはずなのに、動けなくなるほどの威圧感とオーラー。
「はい。天野 玲央です。」
俺も負けじと、平常心で挨拶する。
「柚葉の兄の戒だ。いつも柚葉がお世話になってるね。」
業務連絡のように、淡々と話す戒さん。
あまり歓迎はされてないらしい。
「まぁ、座ってよ。柚葉はお茶出して」
「わかった」
柚葉がキッチンに行くのを見送ってから
口を開いた戒さん。
「柚葉を脅してる訳じゃないよな」
柚葉と話すときと明らかに違う、冷たい表情。
「もちろんです。俺は柚葉を本気で好きです。」
戒さんの目を見据えて、ハッキリ言う。
「その言葉、忘れるなよ。」
「はい。」
短い会話が終わると同時に
「お待たせ。はいお茶。」
飲み物をお盆で持ってきた柚葉が戻ってきた。
「さんきゅ。」
「ありがと、柚葉。座って。」
俺の隣に座った柚葉を確認して、戒さんは
「さて、本題に入るぞ。」
口を開いた。
「なんか言う事があるんだろ?」
「うん」
「はい。」
それで俺は戒さんに、俺たちの"本当の関係"を話した。
黙って最後まで聞いた戒さん。
「そういうことか。柚葉に彼氏なんて可笑しいと思ったんだ。」
苦笑している戒さん。
「柚葉がそうしたいなら、俺は口出ししないよ。
それに、柚葉の完璧な笑顔を見破る玲央は凄いしね。
俺の殺気に怖気付かなかったし、認めてやるよ。」
お前を試したんだ、とイタズラっぽく笑う戒さん。
「あ、はい……」
さっきまでとは違う、優しい笑顔。
どうやら俺は認めてもらえたらしい。