ー3年前ー


中学校の入学式の日。


壁一面に貼られたクラス表の中から、どうにか自分の名前を見つけてクラスに向かった。


俺は1年A組らしい。


1年は一階にあって、すぐに迷うことなく着いた。


クラスに入ると、小学校と変わらない見知った奴ばかり。


変わった事と言えば、私服から学ランに変わった事くらい。


「あ、玲央来た来た」

「おせーぞ玲央!」


教室に入れば、俺に寄ってくるクラスメイト。


「わりわり」


何故か昔から、何もしなくても人が寄ってくる。


だから俺はそれにとりあえず対応する。


「天野くんだっ!」

「おはよー」

「学ランカッコいいね」


顔はカッコいい部類に入るらしい (姉情報) 俺は、女子もたくさん寄ってくる。


でも、俺は顔に出さないが見た目だけで判断して寄ってくる女子が嫌い。


猫なで声に吐き気すらする。


「ここってさ、隣の小学校からも半分くらい来るんだろ?」


「あー、そうらしいな。」


俺の通う中学は、
俺の通ってた小学校全員と、隣の小学校から半分ほどが集まるらしい。


だから、この教室にも見たことない奴はいる。


「隣から来る奴にさ、すげー美人が居るらしいぜ!」


「へー。」


「おまっ。興味ねぇのかよ。」


「気になるけど、興味ないな。」


美人ねぇー。

この歳で美人とか居るのかよ。


女に興味ねぇし。俺には関係ない。


ガラガラ


ちょうど教室の扉が開いた。


誰が入ってきたかなんて、さほど興味無かったが


シーン


誰かが入ってきた教室は、静まり返った。


気になって扉の方を見ると、


マジかよ……


すげー美人が居た。


まっすぐ伸びた黒い髪、長い睫毛に潤った唇。
手足は細すぎず、太すぎず、丁度よくスラリと長い。
おまけに整い過ぎた顔


同じ制服を着ている女子とは、比べ物にならないくらい輝いて見えた。


教室に居た誰もが、そいつに目を奪われた。


「もぉー、柚!置いてかないでよ」


固まっていると、遅れて出てきたそいつの友達らしき女。


「カナごめんね?」


そいつの透き通った声。


首を傾げて友達に謝る姿は、見惚れるほど美しかった。


「柚だから許しちゃーう!」


「ありがと」


静まった教室を気にすることなく、友達と話しながら席に着く女。


ハッとなって我に戻った教室は、


「ねぇねぇ、名前なんて言うの!?」

「友達になろ!」


そいつの元に一斉に群がった。


「私は新藤 柚葉。よろしくね?」



これが俺と柚葉の出会いだった。