「ねぇ、玲央。」
薫が恐る恐るといった感じで、玲央に話しかける。
「あ?」
「柚葉ちゃんって男嫌いなの?」
「……あぁ。」
「今までそんな素振り見せなかったよ?」
「学校では猫被ってるからな。当たり前だ。」
猫被ってるからといっても、嫌いな男にまで完璧に対応するのか?
「契約ってなに?」
ピク、と玲央の眉毛が動いた。
「…………」
「言えないことなの?」
「………」
黙ったままの玲央。
「……言えなくはない。ただ……」
「ただ?」
「柚葉次第だ。」
玲央は柚葉ちゃんを何かから守ろうとしているように見える。
それと同時に、柚葉ちゃんも玲央を何かから守ろうとしているように見える。
「戒さんと柚葉ちゃんって……」
「兄妹。」
「「「はっ?」」」
柚葉ちゃんは戒さんの妹?
だから戒さんの事を夏美さんは、お兄さんと呼んでいたのか。
「柚葉ちゃんは戒さんの妹……?」
「あぁ。」
「戒さんは柚葉ちゃんの兄……?」
「あぁ。」
……薫、聞いていること同じだよ。
「柚葉は2週間、倉庫にも学校にも来ないからな。」
「なんでぇ!?」
ガーン、と効果音が付きそうな勢いの薫。
「柚葉に何かあった時、戒さんが決めた期間柚葉とは会えない。
そしてその期間が過ぎてから柚葉と会えるかは柚葉次第。」
「………」
淡々と話す玲央からは、感情の読み取れない。
何かあった時……
俺はその "何か" を起こしてしまった。
「2週間って、テスト1週間前じゃん。
勉強は大丈夫なのかな?」
2週間後はテスト1週間前になる。
そのテストの結果によって、夏休みが天国か地獄か決まる。
「あいつ教科書読めば、授業出なくても理解出来るから。」
「羨ましい……」
天才……。
とりあえず俺は、柚葉ちゃんが学校に来たら
すぐに謝ろうと決意した。