「てっ……めぇ……このアマ……
ざけんじゃ、ねぇ……」


ナイフを落として、"そこ"を押さえながら崩れ落ちた向こうの総長。


「あーぁ。やっちゃったよ。気持ち悪」


睨まれているのを御構い無しに、マイペースな柚葉ちゃん。


何が起きたのかわからない俺たちは、立ち尽くすしかない。


「柚葉、良くやった。恭介の所に行け」


「わかった」


玲央は柚葉ちゃんの頭を撫でた後、


「おい」

「ひっ……」


声音を変えて、向こうの総長を殴った。


「恭介ー。」


「柚葉ちゃん!?何をしたの?」


戻ってきた柚葉ちゃんを、安全な場所に連れて行き質問。


「男の急所を、強く握ったの」


「「「………」」」


予想外の答えに、その場に居た流星の面子全員が唖然。


「お兄ちゃんがもし人質になった場合、
"そこ"を握り潰せば勝てるって教えてもらったから。」


戒さん……なんてことを教えてるんですか。


余りにも憐れで、股間を押さえて崩れ落ちた向こうの総長に同情してしまった。


多分、この場に居た全員。


「とにかく無事で良かったよ」


「うん。玲央は止めなくていいの?」


完全に意識を失っている向こうの総長を未だに殴り続ける玲央。


「そろそろ止めないとね」


全く、うちの総長は手がかかる。


ただ止めると言っても、我を忘れて殴り続ける玲央を見たことが無い為止め方が分からない。


面子が止めに行くと振り払われてるし、
優と薫が止めに掛かっても殴られてるし


「止められないね……」


頭を使って玲央の止め方を考えていれば


「柚ちゃん!?危ないよ!」


俺の隣に居たはずの柚葉ちゃんが、玲央の元へ走っていた。