重くなり始めた空気を変えたのは、柚葉だった。
「そう言えばさ、もうすぐテストだね」
空気を変えようと、別の話題にした筈なのにピキッと凍った奴が二人。
「あ、あー!ソウイエバ……」
「お、おう。俺、用事出来たから……」
「薫、優、どこ行くの?」
顔を引きつらせながら屋上を出ようとした二人を呼び止める恭介。
「「はい……」」
この世の終わり、みたいな顔で正座し出した。
「薫と優はバカなんだね。」
そんな二人にグサっと来る言葉を贈る柚葉。
「柚ちゃんヒドっ!確かにバカだけどさぁー」
「もう少しオブラートに包んでよ」
「……おバカ?」
「ちがーう!」
なにやらコントをし出した3人。
柚葉も無表情だけど、楽しそうだ。
「うるさい」
微笑ましく見ているのもいいが、煩いの嫌いな恭介はご立腹。
「「はい……」」
「………」
「ここのテストって難しいの?」
「偏差値的には中の下って感じかな。
でも、ここの生徒は授業に出ていても誰も聞いてないから難しいらしい。」
「バカだね、みんな」
バカっつーか、無駄っつーか。
ちなみに今は授業中。
俺たちはサボり。
面倒くさいから、授業はすばるさんのしか出ない。
学期末に行うテストの点数さえ良ければ何も言われないのが、ここの高校のゆるいとこ。
薫はともかく、頭良さそうに見える優もいつも赤点ギリギリ。
薫はいつも赤点。
「柚ちゃん教えて?」
「柚葉ちゃん教えてっ!」
薫と優が柚葉にお願いすれば、
「いいよ」
笑顔で頷いた柚葉。
その笑顔の裏の怖さを知らない薫と優は
「やったーー!」
喜んでいる。
「俺知らね……」
俺の呟きは、隣に座る柚葉にしか聞こえない。


