少し後ろを歩いていたはずの俊ちゃんがいつの間にか隣にいて、そう言った。



「声、かけるか」と言う俊ちゃんと一緒に、名前を呼ぼうとする。



「「桜井せ....」」



私と俊ちゃんの重なった声が止まったのは、見てしまったから。



_____桜井先輩と祐奈ちゃんがキスをしているところを見てしまったから。



「ッ.....」



かすかに、ほっぺたに何かがつたうよな感じがする。



私は、静かに涙を流していた。



「美音?」



「俊ちゃん、ごめん。ちょっとお腹痛くなってきたから、帰るね?家に来るのはまた今度で...じゃ」



家に来る約束をしていた俊ちゃんを置いて、駅まで走った。



俊ちゃんが買ってくれたケーキを片手に。