「悪りぃ、蓮」
蓮と呼ばれたその人は、私の方に振り向く。
その人のあまりにも整った顔に驚いて、固まってしまった。
「ごめんな。怖かったろ?」
そう言ったその人は眉毛を下げて本当に悪かったって顔をしていた。
悪いのは、この人じゃなくて、気づかなかった私なんだけどな。
「だ、大丈夫です」
少しテンパりながらも返事をする。
すると、そのせいかさっきよりももっと眉毛を下げて心配そうな顔をする蓮という人がいた。
そんな顔を見てると、どれだけ心配してるんだ、と思わず「ふふっ」と笑ってしまった。
「え?え?」
目を大きく見開いて驚いていた人を見て、それがやっと先輩であることに気がついた。
体操服の名前の刺繍が青だったから。
1年生ならオレンジのはずだから、それ以外は先輩。
確か緑は3年生だったはずだから、この人は2年生かな。

