でも、ここで降りる人が多すぎて、片岡は乗っておかないといけないのに、その流れで降りそうになっていた。
もしここで片岡が降りたら家に帰り着くのが遅くなってしまう。
そしたら、片岡の親御さんも心配するだろうなと思った。
だから、電車に乗っていられるように手を引っ張る。
そして、人の波がなくなった時、俺も降りようかと思って片岡に「またな」と言おうとすると。
ガチャン。
見事に出入り口がしまって、電車は進み始めてしまった。
俺は、片岡は乗ったままだから別にいいか、って思ってたんだけど、その音を聞いた途端、片岡の顔はわかりやすく青くなった。
片岡のことだから、気にしてるんだろうな。
予想通り、片岡は「すみません!!」と下の方を見ながら謝ってきた。
それから、しばらくずっと下を向いたままで、よっぽど気にしてるんだなって思った。
だから、どうやったら顔を上げてくれるか考えて、片岡の頭に手をのせてみた。