初恋は叶わない。




俊ちゃんによれば、毎年この時期のある日だけは今日みたいに電車が混むらしい。



異常事態の謎が解けてすっきりしたのと、満員電車の疲れが取れてきたのもあって、いつもの元気が戻ってきた時。



私の好きな人が学校に続くもう一つの道から出てきた。



「美音、桜井先輩だぞ」



他の学校に向かっている人に聞こえないように、俊ちゃんがつぶやいた。



俊ちゃんは私の好きな人を知っている。



相談とかもするくらいで、応援してくれている。



「わかってるよ。気づかないわけないでしょ」



朝から桜井先輩を見れてラッキーなんて思って、テンションが上がってるのを少し隠したくて、冷静を装った。



「そんなこと言って、うれしいくせに」



俊ちゃんは応援はしてくれるけど、それをいじってくる。



冷静を装ったのは、俊ちゃんにはバレバレみたい。



俊ちゃんには敵わないなぁーなんて思いながらも、私の視線は桜井先輩に向いている。