「はあ、はぁはぁ...」
それから、家までスピードを落とさずに走ったら、すごく息切れした。
持久力のない私がここまでよく走れたな、と少し感心する。
家に入るとお母さんはいなくて、冷蔵庫の野菜室に買ってきたトマトときゅうりを入れる。
その時。
ピーンポーンピーンポーン。
人に会いたくないのに、誰かが来てしまった。
でも無視しちゃダメだよね。
ガチャッと玄関のドアを開ける。
「はーい...って」
「よ、美音」
「俊ちゃん...」
「うん」
「ふっぅぅ、ぅえ...」
「え、ちょ、美音?!」
なぜだかわからないけど、俊ちゃんを見ると涙が出てきた。
「ちょ、ちょっと、中入ってもいい?」
「う、うん...」
俊ちゃんに家の中に入ってもらう。
それからも、涙は止まらなくて。
長めのソファに二人で腰掛けて、俊ちゃんは黙って頭を撫でてくれた。