「そんなこと、あったっけ?」
「え、覚えてねぇの?」
俊ちゃんが丁寧に話してくれた内容はリアルで、本当のことなんだってわかるけど、記憶がない。
「雨が降ったことは覚えてるよ。一人で土管の中にいたことも。でも、気がついたら公民館にいたってことしか...」
助けてくれた人のことを覚えてないなんて、ダメだな。
っていうか、小学校の時...?
「え!」
「え、なに?」
「小学校の時ってことは、それからずっと私のこと好きでいてくれる人がいるってこと?」
小学校から今までってことは、もう何年もの間ってことだよね。
それに、小学校から高校まで一緒ってことになるから、それが誰かは限られてくる。
「そうだよ。7、8年間になるかもな。もしかしたら気がつく前から好きだったかもしれないから、それ以上かも」
「小学校から高校まで一緒っての人って限られてくる、って思ったけど、よく考えてみれば10人以上いるよね」