「...苦しい」
私、片岡美音(カタオカミオ)は今、登校途中の電車の中にいる。
いつもは座っても空いているところが何席かあるくらいなのに、今日はなぜか人がぎゅうぎゅう詰め。
都会はこれが日常茶飯事なんだろうけど、高層ビルがいくつもあるようなところからは離れたところに住んでいる私にとってはこれは異常事態。
前後左右から押し寄せてくる人の波に耐え切れなくて、「すみません」と言いながら、出入り口付近まで逃げてきた。
だからと言って、人の波から逃げられたわけではないけど、出入り口側の方向1つだけ押されないだけでも、けっこう楽になった。
やっと自分の降りる駅に着くと、早くその息苦しい場からのがれたくて、走って電車を出た。
それから高校に向かうけど、高校までは坂道があって、いつもは楽に上がれるのに、それだけでもきつい。
「満員電車ってこんなに疲れるんだ...」
そうつぶやいてみると、うしろからチャリンチャリンと自転車の音がした。