それが師匠の唇だとわかると、顔が一気に熱くなる。

突然のことで言葉を失う私に対し、横で龍馬さんと組長(主に組長)が叫び声を上げる。

「やっぱり隙だらけなんだから。まあ、それが蒼蝶らしけど。とりあえず、これからよろしくね」

「ちょっと!天宮さんに何してんだこのスケベ兄貴!」

「師匠が弟子に手を出してんじゃねえよ。蒼蝶、こっちに来い」

「坂本もダメ!天宮さんは僕の所に来るの!」

「弟のくせに出しゃばらないでくれる?それに蒼蝶を渡すつもりは微塵もないから。今も、この先もずっとね」

「渡すつもりがねえなら奪ってやるよ。今度こそ蒼蝶は俺のものにする」

「天宮さんは僕のところに来るんだよ!そして、僕が絶対に幸せにするんだ!」

頭上で繰り広げられる口論を聞きながら、私は思わず溜息をついた。

やれやれ、こうも喧嘩をされたら感動の再会も薄れてしまいますよ。

……でも、どうしてかはわからないけど師匠や組長そして龍馬さんと再会できて嬉しい。

そして嬉しさと同時に、私の穏やかな日常が終わりを告げた気がした。


【END】