嘘つきなあなたからの恋文。



隣の彼…コタくんも鉛筆を握って私を見つめる。


2週間ぶりに彼と目が合い、つい緊張して顔を下げた。


「顔、下げないで…描けないよ」


すると小さな、けれど凛とした声が目の前から聞こえ、下げていた顔を上げて真っ直ぐ彼を見つめた。


彼はとても真剣な目をして私を見ていた。



そんな彼を私も見つめた。


また2人の視線が交じる。

その瞬間、先程の恥じらいなど無くなったかの様に鉛筆に力が入った。


彼の真剣な目にやられたのだ。

今のコタくんを描きたいと強く思ったのだ。



それからは、周りはワイワイとペア同士で会話をしながら相手の似顔絵を描いているのに対して、

私たち2人は会話をすることなく、無心に相手を描き続けた。

お互い見つめ合い、そしてスケッチブックに視線を向け描く。


その繰り返し。


会話なんていらなかった。



きっとクラスで真剣に描いていたのは私とコタくん、2人だけだったはずだ。