後日、学校に行くと彼は眉毛を下げて靴箱に立っていた。
「おはよう、コタくん」
私はいつもと変わらない笑顔でコタくんに挨拶をした。
そんな私を見てコタくんは一瞬目を大きくさせて驚いた表情をするとまた眉毛を下げ、困った表情に変わる。
「靴箱でどうしたの?誰か待ってるの?」
「小池さんを待ってた…なんで昨日先に帰ったの?」
その質問を彼がした瞬間、彼は困っているんではないと分かった。
「いきなり消えてすごい心配したんだよ」
あのコタくんが怒ってる。
「……ごめんねっ!昨日お母さんにお使い頼まれてたの忘れてたんだ」
笑顔で嘘を言いつつ、ブレザーのポケットに入れた手は握り拳で震える。
「一言言ってくれれば良かったのに」
確かにいつもなら一言言う。
それ以前にコタくんと一緒にいるのならもしもお母さんにお使い頼まれても無視をしていた。
けれど、あの時は早くあの場から逃げ出したかった。
プレゼント包みを持って嬉しそうに戻ってくるコタくんなんて見たくなかった…。
「…本当ごめんね」
笑うよう試みたが、口元が引きつっているのが自分でも分かるんだ、
「…そう」
目の前の彼が気づかない訳がない。
コタくんは一瞬目を反らすと、小さな溜め息を吐き、私を置いてその場を去った。
置いていかれた当の私は、
置いていかれたショックで目元に涙が溜まり、コタくんの背中は歪んで上手く見えずにその場から動くことができなかった。


