嘘つきなあなたからの恋文。




-小田 健二くんへ-


こんにちは、お久しぶり。


40歳の私に15歳の貴方からお手紙が届きました。
そのお返事を今日届けにきました。

空の上は退屈でしょう、私のこのお手紙で少しは退屈もしのげると思いますので読んで下さい。



コタくん、貴方がこの世から去って何十年という月日が経ちました。


40歳だよ?想像できないでしょ、40歳の私。

結婚もして子どももいるんだよ?


あの頃より何もかも衰えたよ。

けどね、街中で【ケンジ】、この名が聞こえるとついつい探しちゃうの。
バカよね…ちゃんと分かってるのにそんな所は衰えてないのが自分自身怖いと思うわ。


この前初めて中学の時の同窓会に出たよ、コタくんと一緒に過ごした3年生のクラスね。
みんな大人になってて驚いた。
もう大人というより初老ね。

一番驚いたのは綾部くん、今の綾部くん知ってる?
学生時代あんなにモテてたのに今じゃあ髪の毛が寂しいおじさんになっててつい大声出して驚いちゃった。
コタくんが40歳になってたらどんな姿になってたのかな…?

同窓会が終わって帰る時、綾部くんが手紙を差し出してきたの。
少し古びた白い封筒、真ん中に見覚えのある字で書かれた【小池さんへ】を見てついその場で泣き崩れてしまったわ。

その後すぐに封筒の裏に書かれた【小田より】を見て嗚咽が出るほど泣いたのは一生で一番恥ずかしい思い出です。



だってもう増えないだろうと思っていた貴方の思い出が増えた瞬間だよ?

おばさんが嗚咽を出して泣いても許してよね。