だから文化祭の日、君が僕を好きだと伝えてくれたことが本当にすごい嬉しかった。
嬉しくて…そして辛かった。
だって小池さんの気持ちに応えることはできなかったから。
例え両想いだったとしても1年先の未来を生きていたら奇跡な僕の命。
そんな僕の本当の気持ちを、何十年先の未来もある君に伝えられる訳がない。
小池さん、あの時はごめんね。
泣かしてごめんね。
嘘ついてごめんね。
そして、嘘をつかせてごめんね。
初めて見た君の作り笑い、教室で1人声を殺して泣いていた君の声をドア越しから聞いて僕は改めて自分の嘘の重みを痛感し、
痛感したと共に僕の命が終わるまで この嘘を貫き通そうと決意も新たにしました。
それからの僕の小池さんへの対応は嘘ばかりだった。
嘘を嘘で固め、またその上に嘘を重ねる。
高校受験もその1つ。
君は何度も何度も聞いてくれたね。
どこの高校に行くの?と。
その答えをいつも僕は春になったら分かるよとはぐらかしてたね。
春も過ぎたことだし、答えを言うね。
小池さんも知ってるだろうけど僕はどこの高校にも行かなかったんだ。
いや、行けなかった方が正しいかな。
病院で闘病生活をする。
これが僕の中学卒業後の進路でした。
だから勉強はどんなに頑張っても高校へは行かない僕にはあまり意味のないことだった。
頑張って1つでも多くの問題を解いたって試験すら受けない僕にはただの暇つぶし。
勉強なんて君が分からないと言えば教えてあげる為だけの行為なんだよ。
それ以外、数学の公式なんて何も得をしない。
小池さんの分からなくて困っていた顔を問題の意味を理解して喜ぶ顔にさせたくてただ頑張っていただけ。
いつしか僕の考えは小池さん中心にいた。
不思議だね、たった1年隣りの席だっただけなのに16年生きてきた僕の心は小池さん一色だよ。
……正直な話、僕の志望校は小池さんと同じ高校だったんだ。
学力問わず、小池さんが行く高校に志望したかった。
春から小池さんと同じ制服を着て隣を歩いてみたかった。
本当だよ?
本当にそう願ってたんだ。
4月に君が受かった高校のクラス発表の掲示板で涙を流していたらしいと国人から聞いたよ。
その涙は僕がいなかったからかな?
そう思う僕は自惚れすぎてるかな。
あとちょっとはそう思わせてね。


