受話器を手から離すと勢い良く階段を登って自分の部屋に戻り、視界に入ったベッドの側に置いてあった画用紙を手に取った。
その画用紙は中学の頃コタくんが私を描いてくれた似顔絵。
真剣な目をした私が今の私を見つめる。
この時はまだこんな未来が待ってるなんて思っても見なかった。
少しでも…少しでもコタくんの異変に気づいていたら何か変わってた…?
ふと、いつもはそんなに視線を向けないセーラー服にも視線を向けた。
「……え?」
すると、左胸に違和感を覚え凝視する。
ねぇ、コタくん。
画用紙を持つ手に力が入り、画用紙にシワが入る。
「なに……これ」
貴方はどんな気持ちでこれを描いたのかな。
どんな気持ちで私に渡してくれたの?
どんな気持ちで貴方はずっと私の隣にいてくれたの?
ねぇ、コタくん。
鉛筆で真っ黒に塗られたセーラー服。
けれど、左胸を凝視するとうっすらと文字が浮かぶ。
《未来の君もずっと笑っていて》
貴方の隠れたメッセージ。
「卑怯よ…」
こんなに胸を締め付ける癖に…
こんなに恋い焦がらせる癖に…
貴方はいない。
この世界にもう貴方はいない。
知ってたくせに…私がこのメッセージに気づく時にはもうこの世に自分がいないなんてきっと分かってたくせに
「こんなの……こんなの……」
震える手に力を入れた。


