自分でも何故拒否するか分からない。
でも、コタくんの最後に立会いたくなかった。
「……ごめん」
もう一度小さな声で発した謝罪。
『それって誰への謝罪？』
「誰…？」
『会えないって俺に言ってんの？それとも』
「………」
『あいつに言ってんの？』
綾部くんの一層低くなった声。
今まで彼のこんなに低い声なんて聞いたことがない。
彼のことを詳しく知ってる訳ではないがこんなに怒りを見せてくるなんて…初めてだ。
それ程私が発した言葉は失礼だったということだ。
『…小池、もう一度言う。
今日が健二と会える最後の日だ……選択を間違えるなよ』
「………ごめん」
受話器を耳から離しても、綾部君の声が微音に聞こえる。
必死に『来いよ』と叫んでる。
そんな彼の声を届ける電波は受話器を置くと遮断された。
