次の日、朝早くから電話が掛かってきた。
相手は昨日と一緒の綾部くん。
「小池です」と第一声を話す声が私だと分かると
『なんで来てくれなかったんだ』と
自分の名を名乗ることなく勢い良く怒鳴り、責める言葉から電話は始まった。
昨日同様、声で綾部君と分かると私はすぐに返す言葉が見つからず、沈黙を続けた。
すると綾部くんは私の反応なんて関係なしに次から次へと伝えたいことを口にする。
『ずっと好きだったんだろ?
ずっと、ずっとあいつのことを想ってくれてたんだろ?
なのに!なのになんで来なかったんだよ!』
綾部くんが私の気持ちを知っていることをその時知った。
『昨日俺、ずっとあいつの側にいたんだ。
あいつの親にも頼み込んで、あいつの側に朝までいさせてもらった。
一緒にいたかったのはもちろんだけど、小池が来ると思ったから…小池を待ってたのに』
「うん…」
『なぁ…今日は…今日は来るよな?
今日…最後だぞ?
本当に本当の最後の別れになるぞ?』
貴方は本当に優しい。
昨日と同じく震える声で現実を私に教えてくれる。
同い年とは思えない程、強い。
そんな綾部君が力説してくれているのに
「ごめん…私行けない」
『なんでっ…』
「……ごめん……会えない」
なんでと言われた質問に私は答えることが出来ない。
『なんで』
「……ごめん」
だって自分でも分からないから。


