コタくんが死んだ。
その事実は私の全身の力を抜けされるには容易い事実で、
あの後、綾部くんの電話を切ったかすら思い出せず、気づいたら自室のベッドの上で三角座りをしていた。
暗い夜の部屋、ベッドの上には私を囲む様に卒業アルバムや、授業中に些細なことを書いてやり取りした手紙、写真、そして美術の授業で交換した似顔絵と第2ボタン。
コタくんと過ごした一年間の思い出がベッドの上に散らばっていた。
それを窓から射し込む三日月の光だけで見つめる。
優しい顔で笑うコタくん。
丁寧な字で書かれた手紙。
指揮する私を見つめて歌っているコタくんが写っている卒業アルバム。
そして、私の似顔絵。
「コタ……くん」
一年間…たった一年なのに。
こんなに思い出が溢れてる。
その思い出の中にコタくんが病気なんて予兆を見せた試しがない。
いや予兆はあったはず、けれど彼は頑なに隠し続けたんだ。
だから彼はもうこの世界にいないのだ。
ゆっくりと時間だけが過ぎていく中ゆっくりと事実が現実感を増す。
コタくんは死んだ。
ただ1人しかいない空間でひっそりと現実を受け止めようとした。


