嘘つきなあなたからの恋文。












「あの日のことは何年経っても忘れられない……だから夏は嫌いよ」



遠くから蝉の鳴き声と蒸し蒸しする暑さ……


この暑さがあの夏に感じた喪失感を思い出させる。



「もしかして…コタくんの命日って……9月9日?

あっ…でも夏休みじゃないか。
じゃあなんで……」



9月9日…毎年私が何が何でも出掛ける日。

それは毎年でまだ小さな蒼が置いてかれることに寂しがって泣いて私を求めても無理して出掛けている日。


私が毎年出掛ける9月9日

確かに普通に考えてコタくんの命日が9日だと思って当然だ。

だけど、


「違うよ…コタくんの命日は8月9日よ。

でも私がコタくんに会いに行くのは9月9日なの」



コタくんの命日は8月9日だ。


「なんで8月9日にお参り行かないの?」


「私がコタくんにお別れした日が9月9日だから…」


「……どういうこと?」


「私はコタくんのお通夜にも葬式にも出席しなかったの」


後悔はしていない。

でも、ただ一つ悔いているとしたら…最後に肉眼で16歳のコタくんに会ってみたかった。

例え、大好きだった彼の微笑む姿が見れなかったとしても…。