ゆっくりと綾部くんは深呼吸すると、一呼吸空け、
『単刀直入に言う』
はっきりとした声で言った。
「え、うん」
『健二がっ……』
「コタくん?」
いきなりのコタくんというワードに顔が綻ぶ。
しかし、それは次の言葉で一変した。
『健二が死んだ』
「はっ……?何言ってんの?」
『健二が…亡くなった』
「亡くなったって…どういうこと?」
意味が分からない。
どういうこと?
ちゃんと頭の中に入ってこない。
『さっき…あいつが死んだんだ』
何度も綾部くんが真実を教えてくれる中、私はどうしてもその真実と向き合いたくない一心で
「ねぇ、綾部くん…暑い」
『…小池?』
「暑くて意味がわからない。
暑くて…綾部くんが言ってる意味が分からないよ」
『……』
「暑くて…分からないよ」
暑さのせいにして現実から逃げた。
『小池…』
そんな弱い私を綾部くんは最後まで攻めることはしなかった。
『…最後にあいつに会ってくれ』
綾部くんはそう発してコタくんの自宅の住所言うと電話を切った。
気づけば、身体全体の力は抜け、アイスは溶けて床に水色の水溜りが出来ていた。


