「何で?」
「知紗、いつも自分のことチサって言うじゃん。
でも、さっきあたしって言っていたじゃん」
バレたか…。
「…チサ、さっちゃんの両親に嫌われているから……」
「どういうこと?」
「さっちゃんのお母さんは、チサのママのお姉さんなんだけどね。
伯母さんも伯父さんも、チサのこと嫌いなんだ…」
「何で?」
「…チサが、パパとママを殺したんじゃないかって思っているの」
「どうして…?」
恭真がナイフとフォークを置き、チサを見る。
「チサのパパとママは事故で死んだんだけど…。
チサを庇うようにして亡くなっていたの。
伯母さんはママのことが大好きなシスコンで…ママが死んだのはチサのせいだってチサのこと責めたの……。
伯父さんは義理の兄であるパパを気に入っていて、パパが死んだのはチサのせいって同じように責めたの……。
その上伯母さんも伯父さんも、前からチサが自分のことをチサって言うのが嫌いで、何度も直せって言われていたの。
パパとママがいつも庇って、“知紗の好きなように呼ばせてやれ”って言っていたんだけど、パパとママが死んでからは、庇う人がいなくなって、ますます直せって言われるようになったから、伯母さんと伯父さんの前では自分のこと“あたし”って言うようになったの。
さっちゃんはチサが自分を“チサ”って言うと、すぐに伯母さんたちに告げ口するの。
だからさっちゃんの前でも“あたし”って言うようになったんだ」
誰にも言ったことのないこと。
花菜も紅羽も親友だけど、このことは思い出したくないことだから。
さっちゃんに会わなければ、恭真にも一生言っていなかったかもしれない。


