カノジョは錠剤を受け取り、左右に振った。
そして、不敵に微笑んだ。
「最高よ大地。
あなたは本当に尽くしてくれるわね」
「姫の願い事は全て叶える。
それがおれの幸せであり、義務ですから」
「フフ、嬉しいこと言うじゃない」
姫の笑顔が、おれを狂わせる。
姫の声が、おれを壊す。
姫の欲望が、おれを犯罪へ走らせる。
―――愛シテイマス、姫。
おれの両親は、おれに愛なんて与えなかった。
母親は父親と常に違う男と居た。
父親は新しい薬の開発に夢中で、母親のこともおれのことも、気にしていなかった。
父親は裏社会の人間に薬を売っているらしく、家にお金は余るほどあった。
でも、愛なんてこれっぽちもなかった。
親からは育児放棄され、殆どを家に仕えていた使用人に育てられたおれは、幼い頃から喜怒哀楽のない、常に無表情な少年だった。
人と関わることや愛を知らないおれに、友達なんて出来るはずなかった。
そのため、おれは常に1人で教室の片隅にいるような地味な奴だった。
誰か1人で良い。
誰か、誰でも良いから。
―――おれのことを、心から愛して。
―――おれのことを、必要にして。
誰かおれに、
―――存在価値を教えて。


