「確かに二堂せんせ、王子顔だしなー。性格悪くても私は好きだけど」
 
遠くの方で玖生の声がする。

「いや、でも教師と生徒ってのは……少女マンガじゃあるまいし」
 
紗生が困り果てた声を出す。
 
私はベッドの中でもぞもぞと動いた。
 
熱を測ったら8度7分まであった。
 
氷枕を頭に敷き、冷えピタを額に張り、私は熱でうんうん唸っていた。
 
夕方に起こったコトの顛末を紗生が玖生に報告していた。
 
あの発言から、何事もなかったかのように二堂先生は車に乗り、さっさと帰ってしまった。
 
直哉くんも無言のまま立ち去った。
 
どちらにしても、決裂、といった感じだった。私はもう、どうにでもなれ、といった気分だった。
 
そんなことを思っていたからだろうか、玖生のこんな声が聞こえてきた。

「もしもし、伊津くん? ああ、私、南生じゃなくて玖生」