そして、その事件から1週間ほど経った、ある日。

「よっ!」
 
今日もきりきりと学校生活を終えた後で、校門を出たところ不意に肩を叩かれた。
 
そちらの方を見ると、そこには太陽のような笑顔の大地くんがいたのだった。そして、彼の陰に隠れるかのようにして森村くんがいた。
 
彼らが通う男子校は、私たちの高校の向かいにあって、うちの高校は彼らの通学路にあるのだ。

ばったりと出くわすのもおかしくはなかった。

「えっと、紗生ちゃん? 南生ちゃん?」
 
しかし、私の目は後ろの森村くんを捕らえて放さなかった。

「うん。紗生よ」

「どしたの? ぼんやりして」

「うん」
 
私は曖昧に返事をする。
 
森村くんは私の方など見遣りもせず、そっぽを向き、うつむいていた。
 
見て、見て。私を見て――私は念仏を唱えるかの如くこころの中で呟いていた。
 
久しぶりに見る彼に、どっどっどっと私の鼓動は早鐘を鳴らす。