何故かその手には薄いゴム手袋がはめられていた。
「待って。あのねぇ、千代ちゃんに会いたいっていう人がいるの。だから、ちょっと上がって行ってよ」
「は?あたしに会いたい人?」
もしかして……カンナの父親か……?
開いた扉の間から玄関を覗き込むと、男物と思われる靴が一足置いてあった。
担任にカンナに謝れとは言われたけど、父親に謝れとは言われていないのに。
めんどくさいことになった。
カンナの父親が議員だと風の噂で聞いた。
上から目線で説教を垂れられることを考えると胃が痛くなってくる。
「分かったよ……」
心の中でチッと舌打ちすると、あたしはカンナの言うとおりに玄関に足を踏み入れた。



