ゴクリと唾を飲み込んで周りを見渡す。
誰もいない。
まるで今から万引きでもするかのように挙動不審になる。
目の前にはパンがある。
トイレの床に落ちたパンを拾い上げて食べるなんてありえないのは分かっている。
自分でもどうかしてるって思う。
けれど、生きていくためだ。
カレーパンの衣に灰色の埃がついているのも見て見ぬふりをする。
床の上のビニール袋を手に取るとあたしは素早い動きでパンをその中に押し込んだ。
昨日はこの床に新村の顔を押し付けて笑っていたあたしが今はパンを拾っている。
なんてめじめで滑稽なんだろう。
自然と一筋の涙が頬に伝う。
貴重な食料を手に入れたのが嬉しいのか。
それともプライドも意地も全て捨ててしまった自分が悲しいのか。
どちらか分からない。ただ、涙は溢れ続けた。



