ショートブーツを履いて、アパート前に止まっている車に駆け寄る。
窓ガラスを2回ノックすると、運転席から腕を伸ばした彼がドアを開けてくれた。
「遅くなって、すみません」
一応、謝罪の言葉は社会人のマナー。
急な連絡に関して触れる事無く、私は彼の車に乗り込んだ。
すると、
「食事は済んでるのか?」
「え?あっ、お昼が遅かったので、もう少ししたら年越しそばを食べようかと思ってました」
「1人で?」
「………いけませんか?」
「フッ、いや」
ムッ、ムカつく~~ッ!!
1日1回は毒を吐かなきゃ済まない訳?
こんな男の為に、必死になって身支度した自分が馬鹿らしく思えた。
車は静かに走り出し、私は顔を背けて流れる景色を眺めた。
暫くお互い無言のまま。
誰の曲かも分からないBGM。
息詰まりそうなほど、車内の空気はどんよりしている。
見慣れぬ街の交差点での信号待ち。
「寒くないか?」
「…………大丈夫です」
漸く会話したかと思えば、一言で終了。
再び、沈黙が続く。
けれど、さっきよりは車内の空気もマシになった気がする。
彼のたった一言で心の靄がほんの少し晴れた気がした。
30分ほど走らせた車は、市街地を一望出来る小高い場所の駐車場に停車した。
「降りろ」
「………」
返事もせず、車を降りると。
高台から見下ろす市街地が綺麗な夜景となって眼下に広がっていた。
それに見惚れていると……。
「ッ?!」



