「私、だいぶ前に健ちゃんから聞いた事があったんです」
「………ん?」
「麻生さんって、健ちゃんの高校の後輩らしくて、高校時代は殆ど接点が無かったみたいだけど、うちの会社に入社して以来、歳が近いのもあって飲みに行ったりしてるって」
「へぇ~、初耳」
「私、健ちゃん以外、眼中に無いし。それに、麻生さんがどんな人でも全然興味が無かったから、健ちゃんの話も殆どスルーしてましたけど……」
「………うん」
「でも、確かに聞き覚えがあったんです」
「…………?」
「『アイツ、本当はすっげぇ無器用なんだよ』って」
「どういう事?」
「私もその時はスルーしてたし、仕事は完璧にこなす人だからすっかり忘れてたんですけど。もしかしたら、普段の彼は完璧に見えて、不器用な人なのかもしれませんね」
「………」
無器用?
………彼が?
いまいちピンと来ない。
私は腑に落ちず、首を傾げていると。
「今まで浮いた話が無かったのも、恐らく、その手の事は苦手なんじゃないかしら?」
「ちょっと、待って。………でも、キスは……ぎこちなく無かったよ?」
「う~ん、そこなんですよね~。私もそこが引っ掛かってるんです」
志帆ちゃんは顎に指先を当て、考え込んでいる。
「私の勘ですけど、あの容姿じゃないですか。だから、嫌でも女性が寄って来ると思うんです」
「………ん」
「で、やっぱり男の人だから、それなりに好奇心で……そういう経験はあるのかな?……と、思うんですが」
「…………なるほどねぇ」



