女・29歳。
三十路を目の前にして、至近距離に男性がいる事が新鮮だった。
志帆ちゃんくらいの歳の頃は、街を歩いていても声を掛けられたりしたけど。
さすがにこの歳になると、そういう事からも自然と遠ざかってしまうもの。
だから、余計に気になってしまった。
『結婚』も諦め始めてたし、『女』として努力する事も放棄し始めていたから。
例え、彼に『女』として見て貰えなかったとしても、もう少しだけ足掻いてみようかな?と思った瞬間だった。
こんな複雑な気持ち、若い志帆ちゃんには解らないだろうな。
私は彼女の問いに応えず、ケーキを口にする。
解っている。
現実から逃げてるって。
だけど、能天気に暴走出来るほど、私はもう若くない。
こうして、心配して駆けつけてくれた彼女の好意も素直に受け入れられない自分が本当にもどかしい。
「ごめん」
答えにならない言葉が、部屋のどこかに消えてゆく。
無意識に溜息を零していると。
「私、先輩が好きです」
「えっ、何?………突然」
「大好きなんですッ!!」
「ん、ありがと。ごめん、でも私、そういう趣味は無いの」
「もうぉ~~ッ!!こっちは真剣に話してるのにッ!!」
「フフッ、ごめんごめん」
涙目で訴える志帆ちゃん。
彼女の気持ちが痛いほど伝わって来るから、素直じゃない私はこういう形でしか返せないんだよ。
……知ってるでしょ?
彼女の涙に誘われるように目に涙が滲み始めた。



