店長がテーブルの上にお茶を置き、労いの笑みを浮かべて。
「こんな物で悪いね~」
「いえ、お構いなく。仕事ですので」
一応礼儀を弁え、椅子から腰を上げ会釈すると。
「麻生君がわざわざ、お2人さんを迎えに来たそうだよ」
「えっ?」
店長の言葉に思わず奴に視線を向けてしまった。
すると、志帆ちゃんには爽やかな笑顔を向けたのに、私に視線を移した彼は、志帆ちゃんには分からないように不敵に微笑む。
そのニヒルな笑みが昨夜の出来事を思い出させ、思わず身体がビクッと反応した。
「紺野部長に頼まれて……」
志帆ちゃんが同席しているという事もあり、口調も声色も似非王子仕様のようだ。
「ここまで来て頂いて申し訳ないのですが、電車で帰りますのでお気遣いなく」
私もまた仕事用の仮面を被り、さり気なくお断りする。
こんな奴と同じ車に乗るかと思うと吐気がする。
無理ムリむり!! 絶対無理!!
店長に気付かれないように奴を一瞥すると、
「俺が送って行けたらいいんだけど、生憎この後、仕出しの配達があるんだよね~。方向も反対方向だし、この時間だと1時間に1本じゃないかなぁ~?」
「ッ?!」
「そうですよ~先輩!ラッシュ時ならともかく、こんな時間に駅に行った所で、電車が出た後なら軽く1時間は待つ事になりますし、麻生さんに乗せて貰いましょうよ~」
「………ッ」



