「ベッドに行く?」
「ッ?!………そ、そういう事じゃなくてっ……」
妖艶な瞳で見つめられ、どう抵抗していいのか分からず、顔を俯けて彼の胸におでこをつけた。
私の初めてをまだ……彼にあげてない。
今みたいにそれらしい雰囲気になったりもするけど、どうしても途中でブレーキがかかる。
だけど、そんな私の様子をどこか楽しんでいる彼。
何だかそれがちょっと癪に障る。
彼の掌の上で踊らされてる気がして。
多分、彼は初めてじゃない。
だから、私のこんな姿を『堪んねぇ~』なんて言うけど。
こっちは初めてなんだからしょうがないじゃないっ!!
しかも、高校生みたいにノリで『あげるっ!』なんて行動にも移せない。
30歳という年齢が、足枷になって私を追いつめてゆく。
彼のシャツをギュッと掴んでいると、ポンと頭の上に手が置かれた。
「で?………結婚式がどうした?」
「あっ………あのね?」
「ん」
「私は、家族とごく親しい友人くらいで済ませたいんだけど……」
「………何で?」
「何でって………」
その先の肝心な事が言葉に出来ない。
彼に切ない想いをさせたくないし、辛い過去を思い出して欲しくない。
だけど、それ以上に私に気を遣わないで欲しいと思うのは我が儘なのかな?
社内恋愛だし、彼の立場から言っても、それ相応の式になって当然かもしれない。
だけど、やっぱり………形に囚われず、お互いの気持ちを優先させたいと思うんだけど。



